曽根です。
TD様、安心オートマに変身する前の分解報告です。
症状は、緩い坂でもバックで滑ってしまい、ドレンボルトへ付着した鉄粉も多かったです。
ドンと診察台にのって、まずは外からわかる状況チェック。
クランクシールからのオイル漏れ。
キックダウンスイッチからの漏れは定番です。 対策品と交換します。
アッパーホース辺りからの水漏れもあったようです。
コンバーター下の漏れは、コンバーターシールでしょうか。
ドレンボルトに付着した鉄粉。
このような形の鉄粉はギヤトレインの表面が削られている可能性大です。
それは、後ほど確認しましょう。
水路のコアプラグとウォーターポンプ
これを見ても水路の汚れは推測できます。。。
実際、高圧洗浄ではたくさんの汚れが出てスッキリしましたよ。
デフにも大きなガタがありました。
MINIは右側のガタが大きくなる症状が多く、
それが原因で右のデフサイドからのオイル漏れが多くなります。
ダウンパイプの熱によってデフサイドシールが傷む・・・という説は間違えでしょう。
フロントパネルを外してサーボピストンを動かしてチェックします。
リバースのピストンは大きく動いてしまいます。
安心オートマが組みあがった際には、5mm程の動きですので、
リバースのバンドはすり減っているものと思われます。
3速サーボの動きは正常です。
さらに安心オートマでは1mmで締まるように調整されます
2速も同様で問題ないレベルでした。
エンジンとミッションを分離する前のチェックはここまで。
およその状況が分かったところで本格的な分解に入ります。
オイルポンプを駆動するカム側の溝。
少々ガタがあったようです。
こちら側がオイルポンプ。
ポンプが重かったのか、ポンプを回すキーには力が掛かったようです。
ポンプ本体のクリアランスは、基準を超えてますので交換です。
理想は5/100mmですが、使用限界は 10/100mmの社内基準を設けてます。
新品部品の供給がない現在、中古良品を使います。
97年式以降のMINIは、元々オイルポンプの精度が良くないものが多く、
ブレーキバンドを動かすサーボピストンなどに掛かる油圧そのものが不足するというケースも多く見受けられます。
これが問題のリバースバンドを締めているギヤキャリアケース。
ブレーキバンドは剥がれて金属で擦って削ってしまってます。
剥がれたブレーキバンドの摩擦材はポンプのストレーナーに溜まってました。
手に持っているのが、リバースのサーボピストンですが、上部のオイルシールが切れてしまってます。
ここから油圧が漏れると、リバースだけでなくDに入れたときのタイムラグも大きくなっているはずです。
ブレーキバンドがすり減るとピストンの動きが大きくなって切れやすくなるのですが、引き金となる原因はさて・・。
鶏が先か卵が先なのか。
シールが切れて油圧が漏れればブレーキバンドの締め付けが緩くなり滑りが誘発。
ブレーキバンドが滑れば摩擦材もすり減り
摩擦材が剥がれてブレーキバンドの金属でギヤキャリアを削る
削れた鉄粉でオイルポンプの摩耗が進み十分な油圧を送れなくなる。
油圧が足りなければ滑りを誘発・・・・・
という負のスパイラルで加速度的にバックできない症状が進んでしまうのです。
後期型のMINIに多いパターンです。
ギヤを入れた時のタイムラグが大きかったら要注意。
タイムラグはオートマの万病の元ですよ。
フォワードクラッチ
トップ&リバースクラッチ、どちらにも既にスリッドはすり減ってありませんでした。
前進側にも滑りはあったのでしょうが走っているうちはなかなか気づきにくいかもしれません。
3速トラムの内側のスリーブには傷がはいってましたので打ち替えです。
以前にべベルギヤの剥離で前にも後ろにも動かなくなってしまった
YMD様 と TGS様 の時にもお話しましたが、
ギヤキャリアの中に組み込まれいるべベルギヤなどは、
その歯当たりの角度は厳密に合わせられていて、
そのうちの1枚だけを他のギヤキャリアから外して使用したりすると、
ギヤが削れたり、べベルギヤが剥離したりして破損してしまう原因になります。
この3速ドラムも、
このように、べベルギヤと噛み合ってひと組となっているので、
スリーブを打ち替えてでも、この3速ドラムを使用する必要があるのです。
消耗したブレーキバンドやクラッチ板の交換については こちらから・・・・
オイルポンプから吐出されたオイルは、オートマだけでなく、エンジンも循環してることから、
エンジン側のメタルクリアランスが広くて油圧が漏れてしまうことはオートマのタイムラグに直結します。
毎度同じことを書いてて恐縮ですが、重要なポイントなので省略できずにすみません・・。
今回は、親子メタルともに、それほど傷んでませんでした。
1番のクランクメタルの上側もご覧のとおりまだブロンズは出てません。
ほとんどのオートマMINIがここのメタルが減ってるので珍しいです。
しかし、ここまで分解したら、新しいメタルを交換しておきますね。。
そりゃ、新しい方が気持ちいいでしょ。
キチッと規定トルクで締め付けて
組み上げていきます。
エンジン側は完成です。
組みあがったオートマをエンジンと合体する前の点検です。
指差し点検で毎回確認してます。 『よし。』
思い込みや先入観などを排除しないと、些細な失敗をしてしまいますからね。
『よし。』
『よし。』
『よし。』
『よし。』 これで大丈夫。
エンジンと合体
フロントパネル、コンバーター オイルフィルター
補機も取り付けて、
テスト車両に積み込みます。
実際に動かしての完成検査が、
キャメル/岩崎自動車の安心オートマの信頼なのです。
前進側7kg
リバース油圧 12Kg OKですね。
この時点で油圧異常を発見して再度分解・・ということもありました。
そして、最終チェックはテスト車両で30kmにおよぶ試運転。
テストコースは広い道路、狭い道、上り坂、下り坂、いろいろあります。
タイムラグ無し、変速OK。
今回も、いいオートマが出来ました。
TD様、お楽しみに。。
では、TD様の安心オートマに交換。 本編へはこちらです。
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TD様のオートマ分解 バック滑りは後期型に多い症状です